2025.05.15 家づくり
理想の家が“無料図面”からは生まれない理由

家づくりを検討する際、「無料で図面をお描きしますよ」という言葉に心が動く方は多いと思います。
間取りが見えると一気にマイホームの夢が現実味を帯び、ワクワク感が高まるからです。
ですが、少し冷静になって考えてみてください。
「家の設計図」が“無料”でいいのでしょうか?
この問いの背景には、「誰がその図面を描いているか」という本質的な問題があります。
多くの住宅会社では、営業担当が図面を作成しているケースがあります。
しかし、営業の方は販売のプロであって、設計の専門家ではありません。お客様の要望にただ「いいですね」と同調しながら描かれた間取りは、建築的な観点や土地の条件、将来的な暮らしやすさまで十分に配慮されているとは限らないのです。
とくに注意すべきは、その図面が土地の形状や日当たり、風通しなどを無視した“どこにでも当てはまるプラン”であること。
実際、ネット上にある汎用的な間取りを流用していることもあります。
こうした図面をもとに話が進むと、いざ建築段階になってから「この間取りでは建てられない」「大幅な修正が必要」となることも。
さらに、営業担当者の仕事は「契約を取ること」です。
本来であれば、お客様の暮らしに最適な提案をするべきところを、「契約してもらうための図面」に寄ってしまう傾向があるのも事実です。
結果的に、イメージと違う住みにくい家になってしまう…そんな声も少なくありません。
一方、“本当に価値ある図面”とは、お客様のライフスタイル・家族構成・敷地条件を熟知した建築士が時間をかけて設計したものです。
そのためには、打ち合わせと設計に数週間~1ヶ月ほど要します。
これには相応の設計料がかかりますが、それこそが“納得のいく家づくり”への第一歩ではないでしょうか。
私たちも図面作成には費用をいただいています。それは「家づくりのパートナーとして、真剣に設計に向き合う」という意思表示であり、お客様の未来に対する責任でもあります。
「無料だからお願いする」ではなく、「信頼できる建築士に依頼する」──。その意識の差が、数十年住み続ける家の“質”を左右します。
本物の設計には価値があります。ぜひ、“高くても頼むべきプロの仕事”を、あなたの家づくりに取り入れてください。